音声版
ためしに作ってみた合成音声版あとがきです。ラジオくらいの長さあるので、ながら用途にでも。
6~7話のあとがたりをします。せっかくなので今回も一人二役のインタビュー形式にします。なんで?
なんか、改めてあとがたりを全部見返してみると、インタビュー形式の記事が一番落ち着いたテンションで読みやすく感じたので……。多分、『質問』というテイで適度に箸が休まるのと、『回答』というテイで丁寧語になるのが合わさってテンションが丁度良くなるのだと思います。
世の数多の合成音声動画が2人かけあい式になっているのも、その丁度良さゆえな気がする。ゆっくり動画みたいなもんだと思って読んでください。あれも実質一人かけあいだし。動画でやっていいなら文面でやってもいいんじゃないでしょうか。
6~7話でやりたかったこと
ーー個別回の話の前に、まずは6~7話全体の総括からしましょうか。
そうですね。続きものの話になっていたのもあって、今回は6~7話あわせて160ページほどほぼノーコメントで更新し続けていたので、まずは全体について語っていきたいと思います。
ーー6~7話では、八百八郷西地区の中心都市に到着し、そこで一悶着あり、最終的には中央へ向かう船に乗るという流れになりました。サイト内では『サトの中央へ向かうぞ道中編(仮)』と仮題を置いていましたが、要は西地区での旅編が終わったということですね。
そうですね。西地区編というか、井正が八百八郷に上陸してきて、描き手としても手探りでスタートしたものにキリをつけた形です。
キリのいいところまで描いてしまいたかったのは色々理由があって、『本の形でまとめられる区切りがほしかった』『キリのいいところまで読める長編創作という形にしたかった』など……
あとは………井正と沙華の衣装をチェンジする機会にしたかったというのもあります。
ーー衣装を?
はい。これは本館サイトのつぶやきなどで散々言ってきたのですが、2年以上前にデザインした衣装を描くのがストレスすぎてですね……
ーー衣装を描くのがストレスだった、というのは具体的に言うとどういうところでしょうか?
とにかく装飾が多い!線が多い!あと角度によって破綻する箇所がある!マンガで描くこと考えてデザインしろや!怒!というところですね。デザインしたときの私が想定できていなかった部分で無駄に時間を取られているな……とずっと感じていました。
ーーなるほど、それで二人をゴミ捨て場に突き落としたんですか?
それはなにか印象が…笑
ゴミ処理場に落ちたのは結果的にというか、当初は普通に話に一区切りつけて、新章開始でしれっと服装が変わってるみたいなやつにしようかなと思ってました。そういうのはよくありますよね。
ーーよくありますね。
でも話を詰めていくとなんかゴミ処理場に落ちたり井正の五体がバラバラになったりすることになったので、まあ衣装替えたいし丁度いいかなと。
ーーよく考えたら沙華が教団脱出時の装束のままというのも妙ですしね。
そうなんですよね。これまではそれを変えたいと望むことも特になかったと思います(沙華は教団自体に悪感情はない)。話的には、ボロボロになったから衣装替えしたというのに加えて、沙華の気持ちの変化も表れてるかもしれないですね。
衣装替えについては、小ネタとして番外マンガを描きたい気持ちが少しあるので、そのうち何か描きたいと思っています。その前にやらないといけない作業が山積みではあるんですが…
ーーそれは、がんばってください。
がんばります。
ーー6~7話はとにかく『区切りになる話にしたかった』ということですが、全体を通したテーマや、やりたかったことはなんでしょう?
まず確定でやるつもりだったのは沙華の『目』と『記憶』に関する設定を開示するということですね。今回160ページかけて出てきた設定の中で、唯一初期から決まっていた要素になっています。
ーー唯一……?ということは、井正の身体が破損したら記憶が…とか、生みの親ミソカなどは
ライブ感で生えてきた設定です。創作開始時の自分は知りません。
沙華の設定については該当する話で軽く振り返りますね。我ながら初期から決まってた設定の割にややこしいな…と思っているので。
ーーその他、全体に渡るテーマは何かありますか?
そうですね、全体を通して、『他でもない、自分だけが見つけたもの』というのがテーマになっています。沙華にとっての井正がそうであり、井正にとっての沙華がそうであるという話です。
井正と沙華って別になにか大きな思惑や運命の中で出会ったわけじゃなくて、たまたま出会っただけなんですよね。それは作中のストーリー的にもそうですし、メタ的なキャラメイクの部分でもそうで。サイコロ振ってたまたまできた二人なのでね。正直、そういう感じだもんで特に因縁のない二人ってどう出会うの??と1話段階で相当悩んだりとかもしたんですが、それでも二人が出会った、お互いを見つけたっていうのはすごいことだと思って。
自分で見つけた、自分だから見つけられたものっていうのが好きなんですよね。誰かが見つけてきて与えられたものじゃなく、自分の行動によって見つけたという体験がいいですね。それはアイデンティティになりうるものだと私は思っています。そういう部分が核になっている話かなと。
ーーなるほど、ではそれを踏まえて各話の軽い振り返りをさせていただきます。
軽く、軽く振り返ろうね、絶対だよ。やらないといけない作業がいっぱいあるからね。
#6
ーー区切りになる7話へのつなぎ、沙華の『目』と『記憶』に関する設定を開示する話ですね。設定を開示するにあたり、アドベンチャーゲームのように選択できるページ構成だったのが特徴的です。
この話の目玉はやはりここのギミックでしょうか。すごい思いつきでしたが、個人サイトならではの演出にできてよかったなと思っています。本にする時はこの辺活かせませんが。
ーーこのような演出にした意図はありますか?
6話は沙華の設定を開示する回という関係上、ただただ資料を読むだけというパートがけっこう長いんです。それを出されるがままに読み続けるのってけっこうダルいんじゃないかなという気がして。『どれを読もうかな』『これにしようかな』という選択を間に挟むことで、ただ読まされているだけじゃないという体験を付与………できていたらいいなあと。思っています。
作り手の意図としてはそう、というだけで、普通に流れで読める方がいいという人もいると思いますし、受け取り方は人それぞれかなと思いますが。
ーー沙華の『目』と『記憶』に関する設定が少しややこしいので、ここで軽く振り返りましょう
やりましょうやりましょう。作中で書くことは書きましたが、色々込み入ってるな…と思っているので。
まず、沙華の『目』は『霧の目』という作中独自の体質で、所謂健常とされる目とはかなり見え方が異なっています。霧の中にいる時のように、中景~遠景は白くぼやけて見え、至近距離ならそれなりに視認可能です。沙華は自分の目がそういう状態であると気付いていませんでした。(普通は絶対にわかります)
おそらく人によって見え方には程度の差がある
なぜ自身の目の異常に気付かなかったかというと、それは沙華の埋め込まれた『記憶』のせいです。八百八郷成立初期から化学革命までの約900年間、社会の基盤だった『憶教』の信者の記憶です。超絶めちゃくちゃ大メジャー宗教なので、人口の7~8割以上分の情報はあると思います。それが900年分。それだけ情報があるため、自身の中にある『記憶情報』から『視界を予測して表示』するようなことが可能になっていました。地名の情報に加え、音や足の感触や空気感なんかも『場所を予測して表示するための取っ掛かり』になっています。
視界だけじゃなく運動感覚なども記憶情報として再現されていて、例えば自分がずっと住んでいて慣れている家の中なら真っ暗でも目的の場所には辿り着けるような、そういう感覚的な『記憶』も使っています。生成された視界情報と感覚・運動的な記憶。それらが合わさることで沙華は霧の中のような視界の中でもある程度普通に行動することができていました。そして、そのせいで自身の目の異常に気付きませんでした。
ーーでも、見えているのは100年以上前の人々の記憶をベースにした視界ですよね。現代とはかなり異なるのでは。
そうですね。ここまで旅をしてきた土地が比較的田舎で、あまり大きすぎる変化がなかったおかげで(序盤の沙華の処理能力だと)気付かなかった、という感じではあります。それでも100年あれば土地は変化しますので、そのせいでちょくちょく事故りかけたりしていた……ということになっています。
ーー沙華は本当に6話まで気付いていなかったのでしょうか
気付いていませんでした。上記の通り、沙華は頭の中に超メジャー宗教信者の記憶(900年分)が入っています。その上、無意識に毎秒視界情報をレンダリングし、ちょっと想像できないレベルの処理が常時全身に走っています。それゆえに基本的な思考能力や判断能力がかなり低くて、違和感にも気付きにくい……という設定です。
その割には沙華って、時間はかかるものの“考える”ことができるので、脳の作り自体はだいぶ常人離れしていると思いますね。普通にバケモンです。それも含めて人体改造されているのでしょうね。どれくらい脳をいじれば膨大な記憶情報を収納できるのか、ちょっと実際にやったことがないのでわからないのですが。
6~7話で井正に『ちゃんと自分の頭で考えろ』とガン詰めされたので初期に比べるとかなり考える方にもリソースを配分できるようになってきたと思います。これについては7話以降の描写に少し出ています。
そんなわけで、これまで沙華が『自分の目で見ていた』と思っていたもののほとんどが『知らん誰かの見た世界をミックスして出力したものだった』ということが分かりました。
沙華が世界を旅する動機というのは、『自分の目で世界を見たい』なので、まあまあ致命的な情報で、それゆえにショックを受けてしまったということですね。考えすぎて、元々余裕のない頭が沸騰しているのと、混乱しているのもあり、今後7話終盤までかなり判断力が落ちている状態になります。
ーー井正はこのことに気付いていたのですよね。
はい、井正は最初からずっと沙華を観察していて、『見えているように道を進んでいくが、たまにわけわからんところで事故りかけるのは何故か、記憶から得ているにしてもあらゆる運動感覚が優れているのは何故か』などについて推測していました。ただ、かなり突飛な話ではあるので確信しているほどではなく、彼の中で仮説を立てながら色々試していた、という具合です。
前述の通り、沙華の設定だけは初期から決まっていたので、描写としてはちょくちょくやっていましたね。
他にも一応、明らかに“遠くのものを視認しないとできない”ような言動はしないように気をつけていました。聴覚や触覚がかなり鋭いので、意外となんとかなっていましたが。フィクションによくいる盲目の達人が聴覚や気配で不自由なく行動してるみたいなアレだと思っていただければ。
↑ここは『風切り音を聴いて刀だと判断した(この瞬間にそういう風に視界が補正された)』シーン
ーーおお、ここだけ見ると伏線マンガみたいですね。
仕込んだ割にとにかく描写が難しい設定すぎて「うわー!」ってなってました。作中で説明しきれている自信がなさすぎるため、解説失礼します。
これやってみて思ったんですけど、オリジナル設定×オリジナル設定で「実はこうだった」と提示するのって難しすぎますね。現実でもある設定×オリジナル設定ならまだもう少しとっつきやすかろうものですが。ただ、エンタメ消費寄りのコンテンツにおいて体質や病気に関しては現実にあるものを扱うのはそれはそれで難しいので、ファンタジー世界の特殊設定にしておいた方がしっくりはきます。個人的には。
ーーわかりやすさとトレードオフ的なところはありますね。
本当は作中で井正に解説させる流れにするのがスマートだとは思うんですけど、(井正は説明カタくて上手くはないけど、沙華よりは理解した話ができるし、会話形式にもできる)この件に関しては沙華が自分で行き着くというのが大事なので、一人で考える形になりました。井正も、自分が説明するんじゃなく沙華が考えることを覚える必要があると思っていたみたい。
ーー井正といえば、この話の最初の井正は嘘をついていたのですか?こんなことを言いながら、化遣衆には沙華を連れて行くと伝えていたようですが。
こいつがこんなホラ吹き野郎だったのは、私もびっくりしました。ウソすぎますね、このひと。
ちなみに、この段階の井正は『絶対に沙華を連れて行こう』とは思っていません。沙華が途中で思考を放棄したり、自分の状態に気付けなかったら報告書の内容を後から訂正して置いていくつもりだったらしいです。
ーーとりあえず連れて行くって書いておけば、連れて行く/行かないどっちにも転がせる、と。
そうです。なので、ウソついていることを加味してもこの時点でデレているかデレていないかで言えば、そんなにデレてないです。沙華がちゃんと自分でモノを考えて自分の役に立つ存在になりうるかどうか、試しています。この男、相手が沙華だからなんかいい雰囲気で済んでるけど普通に利己行動しかしてなくて、大丈夫なのかな。
#7/前篇
ーー7話前篇は沙華の生みの親・入侖教のミソカが登場しました。血縁関係が登場するのは地味に初めてですね。
沙華の出自については、初期は『そこら辺で拾ってきた子供(身寄りなし)を改造してる』みたいな設定にしようかと思っていたのですが、色々あって今の形に落ち着きました。とはいえ、沙華は子供時代というものがないのでミソカのことを親とは思っていないですし、ミソカ側も沙華が不完全な存在であるうちは子供だと思っていないので、本質的にはメチャクチャ他人ですね。名実ともに“血の繋がった他人”という感じです。
ーーミソカとは一体何者なのでしょうか?
今出せる情報としては、『神の母になる』ことを人生の目標にしている女性です。産んだ子供のことはまだ自分の子供だとは思っておらず、完璧な神になった瞬間初めて親子になると思っています。自然に子供が神になる確率は低いので、改造することで当たりくじの可能性を上げています。
感情…というか、“自分に反する意識”の大アンチですが、一方で死ぬほど感情的な人でもあります。
ーーまた妙な性質の人物ですね。入侖教は彼女が運営しているのですか?
ミソカは一応入侖教のトップですが、彼女自身は教団運営にはあまり興味がありません。周囲が彼女の活動を利用してついでに一旗上げようとしている、というのが入侖教という組織……というイメージでいます。
ーー彼女と共に登場した、ひずみの化妖はどのような存在なのでしょうか。
ミソカに協力している謎の化妖です。一応ミソカとともにおおまかな設定は決めているのですが、細部はぼやぼやしているのでまた変わっていく気がします。
化妖の能力としてはかなり規格外寄りで、化妖強さTierはかなり上位になると思います。
ーーミソカやひずみの化妖、入侖教はまた沙華たちの前に現れるでしょうか?
なんと、決めていません。ですが、ミソカとひずみは今のところ沙華が死んだと思っているので、しばらくは追っかけてきたりとかいうことはないんじゃないかと思います。
それはそうと、沙華たちの関係ないところで入侖教を掘り下げるようなものは描いてみたいと思っています。時間がほしいのですが。
#7/中篇
ーー7話の中篇は地下のゴミ処理場で沙華と井正が再会し、問答をする話でしたね。井正は前篇にて謎の人影に囲まれた後消息を絶っていたようですが。
はい、7話前篇から中篇の間に井正が何をしていたのか、どうしてゴミ処理場にいたのかについては、補完SSという形で描写してみました。
ーーSSでの補完という形も今までにはないものでしたね。
そうですね。普段SSって書かないので、形になっているかは不安です。
ーー井正サイドの動向をSSという形にしたのはどのような理由からでしょうか?
マンガの本筋としては沙華の動向がメインなので、井正サイドまでやりはじめるととっ散らかるのが一つ。もう一つは、これをマンガで描き始めると無限に時間がかかってしまうからですね。内容としても、必ず読まないといけないものではないと思っています。井正、それにミソカなどの他人物の動向が気になる方は是非目を通してみてください。
ーー沙華と井正が再会した後はしばらく問答が続きます。
この話の前半は状況整理ですね。沙華の視界と記憶についてのおさらいをしつつ、今の沙華が混乱している様を描いています。正直ちょっと判断力も落ちてますね。
ーーそんなこんなで真面目に問答をしていると、野球がはじまってしまいました。
はじまってしまいましたね。
ーーあれは何ですか?
5話で決まった世界設定を引き続き活かしたかったというか。自分的にはけっこう色んな要素を結びつけられて、気に入っています。
一度崩壊して地盤ごと新調(※十千万坪の化妖)された街なので、沙華の古い土地鑑が全く機能しない。街の地下に大きな空洞がある理由付けにもなって、野球設定も活きるという。
ーーそう言われると、繋がっているような、いないような
半井正と沙華は真剣に存在を論じているのに、なんか野球のせいでめちゃくちゃになるのがいいなと思いました。自分しか描かないマンガだなあという意味で。自分が描く意味がないと描く気が起きないので。
ーー個人の趣味創作ならではだと思いました。
ーーそれはそうと、野球シーンについて。背景などまあまあ気合いが入っていますね。
場外で野球がホビアニ文脈で絡みまくる世界の解像度を上げようと思って描きました。5話時点では口頭でしかその話をしていなかったので、背景や熱狂込みで描けてよかったです。背景は、このページを描くだけで一週間くらいかかりました。球団歌の歌詞も考えました。
鶴亀レッグス公式球団歌「もとめろ鶴亀レッグス」
求めろ 求めろ 求めつづけろ 鶴亀戦士たち
悠久の空と大地 いとなむ我ら
ひたむきに ひたむきに 進め 戦え
火の中水の中 地が裂け嵐が来ようとも
駆けよとこしえに 栄光掴むその日まで
ゆけ!ゆけ!鶴亀 鶴亀レッグス
求めろ 求めろ 求めつづけろ 鶴亀戦士たち
ーートッチーくんが応援している『鶴亀レッグス』とはどのようなチームなのでしょうか。
鶴亀レッグスは創設からそれなりに長い歴史を持ち、西地区では強豪・古豪と言えるようなチームです。西舌の街だけでなく、西地区中心に広いファン層を持っています。
しかし、このチームは一度も地区優勝を決めたことがないことでも有名です。(※補足…地区優勝すると、地区代表として4年に一度の覇権争い大会に出場でき、優勝すると八百八郷の王みたいな存在になれるぞ)
過去に一度、地区優勝に王手をかけたことがあるのですが、まさに優勝を決めようかというその日に大災害に見舞われ、かなり試合どころじゃない感じになったという悲痛な歴史があります。その時の街の人々の感情から生まれたのが十千万坪の化妖、トッチーくんです。だからトッチーくんは野球が大好き。
ーーなるほど。トッチーくんは街の地盤であり、またその気分によって廃棄物を処理してくれる便利存在でもあるわけですが、街が彼の気分に左右されすぎるというようなことはあるのでしょうか?例えば、試合でひどい負け方をした後に地震が起こったり。
基本的にないですね。一度も優勝したことのないチームを応援し続けている化妖のメンタルを、ナメない方がいいのです。その質問、西舌の人々にすると『またその質問か、何も分かってねえな、こいつ。』という目で見られそうです。
土地になったばかりの初期はわかりませんが、現在は50年の実績があるので住民からも信頼されてますね。
また、ごみ処理についても基本的に試合に負け続けても問題はありません。試合は開催されるだけで球場メシが売れますからね。それと同じです。試合内容によって多少処理量が変わってきますが、長期的に見ると毎年だいたい同じくらいの量を消費していると思います。
ーーごみ処理するために野球をしているのではなく、野球をした結果勝手にごみを食べてくれている?
ニュアンスとしてはそんな感じですね。オフシーズンでもトッチーくんは普通にゴミを処理していると思います。ただ、試合をしている時は爆食いするというだけで。
ーー作中では沙華と井正がゴミ処理場に落ちていますが、本来は侵入できない作りになっているのでしょうか?
そうですね。街のゴミは自治組織によって収集され、厳重に管理された専用の穴から地下に投棄している感じですね。一応何かあった時のための出入り口はあって、それが後篇で沙華が脱出したルートになっています。
本来入れないはずのゴミ処理場に沙華&井正が落ちたのは、ひずみの化妖がその能力で分厚い地盤に穴を空けたせいです。
ーーそういえば、トッチーくん的には自分の身体に穴を空けたりして大丈夫なのでしょうか?
街全体がトッチーくんの身体といっても、ありとあらゆる場所に神経が通ってるとかそういうわけではないので、多少穴が空いたりするのは全く問題ないですね。地盤の性質としては半分くらいは化妖だけど半分くらいは自然物、みたいな物質なんじゃないかと思っています。
そうそう、ドラ蔵は地面的な場所なら自由に移動できて、また地面上を動く物体もめちゃくちゃ感知できるんですが、今回井正と沙華をうまく探せなかったのは西舌が普通の地面じゃなかったから、という裏設定(作中特に触れなかった設定)がありますね。存在がカチあってしまうので、少し能力が制限されているイメージです。根っこを這わせて徒歩で移動することはできるけど、地中に潜って高速移動は難しい。
その他の小ネタ
井正の探知の煙は『心に隙間を持った者の感情を探知する』という原理で動く(1話参照)。なのでとりあえずそれで街のどこかしらに届かせて狼煙としよう、と飛ばしてみたら、すぐそばにドデカ隙間持ちがいたせいで動かなかった。
#7/後篇
ーー7話の後篇は、荒ぶるトッチーくん分体たちから逃げて、地下から脱出するパートです。
ここまで長くなっちゃったし、後篇はクライマックスゆえにあんまり語りすぎると野暮な気がするので、あとがたりとしては軽めに流しておきます。よければ感じてくださるとうれしいです。
へなちょこだけどラストシーンのメイキング動画があります。
#7/エピローグ
ーーエピローグでは色々あって船に乗って出発しましたね。
だんだん話の紹介が雑になってませんか?
ーー一気に文章を打って疲れてきました。
ーークライマックスは7話後篇でしたが、その後のエピローグが36ページもありますね。普通に1話分くらいあります。
そうなんですよね。本当は20ページ以下に抑えたかったんですが、やりたいことやってるとこんなページ数になっちゃいました。化遣衆支部絡みの回収、トッチーくんのフォロー、井正のお爺ちゃんの話に、井正の報告書と井正の渾身のフカし、今後の旅をどうするのか、井正目覚める、身体の再生と記憶の話、沙華の名前、ドラ蔵との別れに、沙華のトラウマ、出立………
ーーやることが多いですね。
多かったですね。7話でやったことだけじゃなく、1話からやってきたこと、今後に関わることも含めて色々入れておきたい要素がたくさんあって。できるだけ義務説明だけの退屈な話にはならないよう、適度に沙華と井正の感情のやりとりを挟みました。エピローグでの二人のやりとりはどれも気に入っています。
ーー井正が、一度うっかり忘れてしまった沙華の名前を思い出す?シーンですね。
はい。地味に井正が初めて沙華の名前を呼ぶシーンでもあります。『初めて名前を呼ぶ』ってかなりポピュラーなエモ・シーンですが、井正の名前観(?)からするとちょっと文脈が異なる気はしますね。加えて『一回忘れちゃったもの』として推測して掘り出して呼ぶのはまた違った意味合いが生まれていいかなと。井正と沙華がともに旅した体験があったからこそ名前を推測できたというわけですね。名前を当てられたということが何よりの証明であるという、お気に入りのシーンです。
ーーエピローグの感情的なやりとり、最後のトラウマ云々の部分もそうですね。
そうですそうです。沙華のテンションがちょっと変なのと、井正が都合悪くなるとガン無視してくるところ好きです。井正って感情面でわかりやすく取り乱したり赤面したりするタイプではないけど、じゃあどういう反応するのかなと思った時に無表情でガン無視してくるのはすごい彼らしい気がしています。
最近は井正視点で話を描くことが少なくなってきて、より彼らしい挙動が描けるようになってきました。序盤は井正にカメラを置いて彼のモノローグを追うしかなかったんですけど、それが必須ではなくなってきて楽しいです。何を考えてるか分かりにくい、ちょっとミステリアスなくらいが井正らしい温度感・空気感なんじゃないかな~と、最近はそんな気がしています。
ーーかなり“気がしています”ね
行き当たりばったりの手探り進行すぎて“らしさ”というものの手応えが伝わっているか微妙に自信がないんです…笑
ーーこれからは井正ではなく沙華の視点になるのでしょうか?
うーん、どうなんでしょう。沙華は初期に比べると自我の地盤が固まってきて口調も固定されて視点役ができなくもないくらいまでは変わってきたけれど、相変わらず妙な人ではあるので。視点役にしてはやっぱり思考のテンポが独特でもありますし。
まだ未定なんですけど、もう少し分かりやすい視点役を新規で出す可能性もありますね。
ーーそういえば、ドラ蔵はここで離脱になるんですね。
それね、私も「ドラ蔵ここで離脱なんだ」って思いました。でも性質上船移動できないし、まあ彼の移動スピードなら全然徒歩で中央まで来れるんですけど、化遣衆と提携するみたいな話もあったのでここで離脱になるか~と。お前がいなかったら誰がツッコミをやるんだ?と不安になっています。
まあRPGみたいに共通の目的を持ってパーティ組んでるわけじゃないので、個人の事情で同行したり離脱したりするものですよね。
ドラ蔵はまだまだ色々掘れそうだし、また機会があれば積極的に描きたいところではありますね。
今後について
ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
はい。まずは1~7話をまとめた物理本を作る作業をする予定です。サイト改装もしたいですし、番外編的なものも描きたいので、本筋はしばらく止まっちゃいますね。普通に年末とかになりそうです。個人作業なので仕方ないですね。
ーー1~7話について、サイト内ではずっと『サトの中央へ向かうぞ道中編(仮)』となっていましたが、正式名称はどうなるのでしょうか。
はい、『サトの中央へ向かうぞ道中編(仮)』は今後『橋渡りのばけいづこ』表記に変更する予定です。
ーー???
すいません、こう言うと意味不明ですよね。ややこしいので情報を整理するまでは『サトの中央へ向かうぞ道中編(仮)』という分かりやすい仮題を置いているのですが。
ーー説明をお願いします。
説明します。これは今後サイトを改装するタイミングで情報を整理する予定なのですが、一旦ここに書いておきます。
まず、現在『橋渡りのばけいづこ』としているシリーズ名は『ばけいづこシリーズ』という総称に変更します。そして、『橋渡りのばけいづこ』は『ばけいづこシリーズ』の第一シーズン名、という扱いになります。第二シーズン以降は『◯◯のばけいづこ』という形でタイトルを変えて始めるつもりです。〈物語〉シリーズのようなシステムですね。
ーーああ、〈物語〉シリーズといわれると分かりました。あれは『第一巻、第二巻…』という扱いではなく、『◯物語』という別タイトルで続刊が出ていますね。
そうですそうです。読んだことはないんですけど。
『橋渡りのばけいづこ』は全7話で完結。この続きは『◯◯のばけいづこ』第一話という形で始まる予定です。
ーーなぜ、『橋渡りのばけいづこ』8話ではなく新タイトルの1話という形式にしようと考えたのでしょうか?
創作開始当初から『どこから読んでもいい長編』という形にしたいと思っていたのですが、それを改めて作品形式に落とし込みたかったんですよね。
長編創作マンガって、長くなるとどうしても読み始めるハードルが上がっていくというか、何十話とあるとそれだけで少し尻込みしてしまうところはあると思うんです。それに、最新話が自分的には一番新しい技術で描いているから見てほしいのに、それを見てもらうには数年前の(技術的に)拙い初回から数百ページ読んでもらわないといけない……というのも、うーん、個人的には何かもったいないというか、かなり機会損失になりそうで気になります。
なので、シリーズ切り替えという形式をとり、話数をリセットすることで『とりあえず最新シーズンの第一話から読むでOK』みたいな創作形態にしたいなーと。それで、キャラとかのこれまでが気になったら古い方の初回を見てもらう、みたいな流れにできるといいですね。もちろん、時系列順に最初の最初から読んでいただけるのも嬉しいですが。
ーーなるほど、たしかに長編創作の流入ハードルコントロールは個人創作活動においては大きな課題の一つですね。そういう意味では、長編ではなく読み切りや短~中編を作っていく方がとっつきやすさには繋がりそうですが。
そうなんですよねー。そうなんですけど。自分はキャラや情報が増えてきてからの方が圧倒的に筆が乗るタイプなので、短編連発が全く向いていないんですよね。俺屍※の時から序盤の初速が低いなーと思っていました。根っから長編タイプすぎて。
※俺屍…ランダム要素などで生まれたプレイキャラを操作するゲーム。妄想創作をたくさんしていたが、トヤマは序盤はあっさりめ、攻略進行してキャラ数が増えるごとに妄想アクセルベタ踏みになるタイプだった。
長編野郎なりに、気軽に一番新しい話や単品成立回を読んでもらえるような形にしたいですね。今のところは『そうできたらいいな』の展望の話なので、まだ諸々未定ではあるのですが。
ーー新シリーズについて、現状で決まっていることはありますか?
エピローグの最後でも書いていますが、とりあえず一つ固定の拠点を確保する感じにはしたいと思っています。
井正的には交通の要である中央に拠点を構えて、腰を据えつつあっちこっち移動しやすいように。描き手的には、キャラコンテンツとしてできる幅が広がるので拠点ほしいな~って感じです。
旅モノってどうしてもゲストキャラが本当にゲストキャラになってしまうところがあって、再登場させるのに工夫が必要だなーと感じます。あんまり再登場しすぎると『世界が狭すぎないか?』ってなってしまいますし。
その点、拠点モノ(街モノ)って特に理由なく再登場させやすいんですよね。古今東西色んなコンテンツで拠点という概念が採用されている理由をものすごく実感しています。家族モノにおける自宅、学園モノにおける学校や部室、銀魂の万屋、成歩堂なんでも事務所、俺屍の屋敷など…枚挙にいとまがない。
ーー確かに、拠点があるとこれまでと違ったキャラクターの動かし方ができるようになりそうですね。
拠点を構えつつ旅もする、よくばりシステムを構築できれば……いいなあと思っています。
ーー他には何かありますか?
準レギュラー以上のポジションに女の子がいない問題 というのが自分の中でずっとあったので、メイン格の女子キャラは確定で作るつもりです。女の子描きたいです。
それに、『橋渡りのばけいづこ』のゲストキャラ陣もタイミングがあればまた出したいですねー。拠点もの・街もの要素があればその辺りも(旅オンリーに比べれば)比較的やりやすくはなるんじゃないかと思っています。できたらいいなあ。
というわけで、『橋渡りのばけいづこ』6~7話の振り返りと今後の展望についてでした。ここまで激・長いものをお読みいただき本当にありがとうございます。
7話エピローグの最後に置いていたアンケートに回答いただいた方も本当にありがとうございます。普段はどれくらい読まれているかを意図的に可視化しないようにしているのですが、キリのいいところなので流石に聞いてみたい……!と思い設置してみました。
基本的に自己満足の行き当たりばったりの手探りで描いているので、7話EPを読んでアンケートまで書いてくださる人間が…存在している!ということを認識し、それだけの人様の時間をいただいているという事実にキュっと引き締まる思いです。貴重な時間をいただき本当にありがとうございます。少しでもお楽しみいただけていればビッグ幸です。読んでくれた人たち、よいことが起こってほしい。かなり切実に。
とりあえず無事にキリのいいところまで描き終われて本当に良かったです。キリがよくなりたかったので…(?)
全然完結ではないけど、未完の中に完の要素があるとなんだか落ち着きますね。うまくいえないけれど…
前述の通り、しばらくは本にしたりする作業に注力する予定です。本については特に描き下ろしマンガなどを入れる予定はないので、紙で欲しい人向けという形で作っていきます。WEBで最後まで読んだなら紙本も買ってほしいとかはマジでないので、物質がほしいな~という方に届けばいいかなって思ってます。ご興味ある方は是非に。完成したらまた更新履歴などでもお知らせします。
最後に、改めて当創作を“見つけて”くれてありがとうございました。ではでは!